文化を守ること
村の役人が、漁師に言った。
「この村の誇る伝統的な漁法の文化が、技術革新によって失われつつあります。漁師の皆さんには、貴重な文化を消さぬよう、伝統的な漁法による漁を続けていただきたいのです。」
漁師は役人に言った。
「守らなきゃ消えちまうような習慣なんて、文化とは言えねぇ。
昔の人は、昔のその時代に、これだと思ったやりかたで、のびのび生きて来たんだ。
そのやりかたに、誰も文句は言わなかった。
でもな、俺たちだって、今この時代を生きてるんだ。
昔を生きているわけじゃねぇ。
今の時代には、このやり方の方が良いと、俺たちが考えてるんだ。
この時代を生きる、この俺たちが、考えてるんだ。
このやりかたが、俺たちの文化だ。おい、どうしてそんなに嫌な顔をするんだ。」